『仏陀(ブッダ)最後の旅』
霊鷲山(りょうじゅせん)はインドのビハール州のほぼ中央に位置する山です。
仏陀(ブッダ)(釈迦佛)が無量寿経や法華経を説いたとされる場所です。
人生の旅路の最後で、人は、老いや死と、どの様に向き合えば良いのでしょうか。
およそ2500年前、その問いに一つの答えを出した人が居ます。
その人の名は、ゴーダマ・シッタールダ。
(パーリ語形。釈迦。仏教の開祖)。
人々からは目覚めた人・仏陀(ブッダ)と呼ばれましました。
生きること、老いること、病(やまい)、そして死。
人生は苦しみに満ちています。
仏陀(ブッダ)は、その苦しみと、「共に生きること」を説き続けましました。
(キリスト教は「人は生まれながらに原罪がある・救って貰う」とは違うようです)
仏陀(ブッダ)が齢80を迎える頃に、この霊鷲山に滞在していた仏陀(ブッダ)は、そこから山を降りて、そして、大変困難な旅、ガンジスを超えて、北へ北上するという、6ヶ月・数百キロにおよぶ旅に出発する訳です。
そして、その最初の出発点がこの霊鷲山、一体、仏陀(ブッダ)が80歳になって何を感じ、何を求めて、困難な旅に出たのでしょうか。
最初の動機は何だったのだろうかと勝手に想像するんですが、人間というものは、ある時期に達すると、自分の人生というものを振り返ってみながら、そして、その自分の人生の締めくくりという様なことを否でも応でも感じない訳にはいかない訳だと思います。
悟りを開いて45年。
常に布教・伝道の旅にあった仏陀(ブッダ)。
80歳で、ここ霊鷲山を立ちます。
それが最後の旅になりましました。
苦難に満ちた旅の中で、仏陀(ブッダ)その人は、いかに老いを受け入れ、病(やまい)に耐え、そして、どの様に死を迎えたのでしょうか。
およそ2500年前、釈迦族の王子として生まれながら、出家し、苦行のはてに悟りをひらいた仏陀(ブッダ)。
その教えは、時を越え、多くの人々の中に広まって行きましました。
人は、何故、苦しむのか、苦しみと如何に向きあうのでしょうか。
仏教2500年の歩みは、その問いかけの歴史でもありましました。
21世紀を迎えた今も、人々は変わらず多くの苦しみを抱いています。
その中にあって仏教は何をなし得るのでしょうか。
さまざまな伝説に彩られ、なぞに満ちた仏陀(ブッダ)の生涯。
しかし、その晩年については克明な記録が、いくつかの経典として残されています。
大般涅槃経や、ダイパリミッパーナ経。
そこには仏陀(ブッダ)の死と、最後の旅の様子が記されています。
霊鷲山から旅立つ前、仏陀(ブッダ)は弟子達を集め、悟りに至る道について次のように説きましました。
「戒律と共に修行して完成された精神統一は大いなる果報をもたらし、大いなる功徳がある。」
「精神統一と共に修養された智慧は、偉大な果報をもたらし、大いなる功徳がある。」
「智慧とともに修養された心は、もろもろの汚れ、すなわち、欲望の汚れ、生存の汚れ、無明の汚れから『まったく解脱』する。」
と説かれましました。
「涅槃」とは、「欲望の炎が吹き消された状態」のことです。
当初は、仏陀(ブッダ)が35才で到達された境地を単に「涅槃」と呼び、仏陀(ブッダ)が亡くなってその肉体も滅した時を「大般(だいはつ)涅槃」と呼んで区別していたそうです。
仏陀(ブッダ)は35才で悟られた後、その教えを広めるため、亡くなる直前まで、北インド地方全土を歩いてまわられましました。
ある時は教えを請う者に説法をされ、またある時は人々の悩みなどを聞くということを倦むことなく続けられたのでした。。
仏陀最後の旅と死に至る姿が述された経典として、「大パリニッバーナ経(パーリ語)」があります。
仏陀最後の旅における「教えとは何か」を人間の姿での足跡と死に至る姿をみていくことにしましょう。
その中で、死に向かう心構えなりが見つけ出せればと思います。
「ブッダ最後の旅-大パリニッバーナ経」/中村元訳、岩波文庫を参考にしましました。
「大パリニッバーナ経(パーリ語)」は、漢訳経典としては、「大涅槃経」として知られています。
パーリ聖典では、『長部』第十六経の『大般涅槃経』(mahAparinibbAna-suttanta)で、まさしく仏陀の「大いなる死」(大般涅槃)を語る経典です。
漢訳では、『長阿含経』第二経の『遊行経』(仏陀耶舎・竺仏念共訳)、『仏般泥疑経』(白法祖訳)、『般泥疑経』(訳者不明)、『大般涅槃経』(法顕訳)が、これに当たります。
この経は仏陀(ブッダ)の末期を誇張もなく忠実に伝えています。
これを読んでも、仏陀(ブッダ)は、信仰を強要したり、自分の正当性を誇張したり、教祖的に大言壮語したりするような方ではなく、ただ「真理」という一条の光に向かって自ら進み、また弟子たちの自覚を促し修行への熱意を奮起させるような方法をされていた方のように思えます。
仏陀(ブッダ)の最後の旅、そして臨終から遺骨の分配の様子までかかれたこのお経は、仏陀(ブッダ)の教えはもちろん、その人柄やまわりの雰囲気を如実に伝えてくれ、あらためてその偉大さを感じざるを得ません。
『ブッダ最後の旅』として岩波文庫から出版されていますので、ぜひご覧ください。
『釈迦 最後の旅―『大般涅槃経』を読む [単行本』ひろ さちや (著)も併せて読まれることをおすすめします。
ブッダ最後の旅―大パリニッバーナ経 (ワイド版岩波文庫) [単行本]
中村 元 (翻訳)
ブッダ最後の旅―大パリニッバーナ経 (岩波文庫) [文庫]
中村 元 (翻訳)
釈迦 最後の旅―『大般涅槃経』を読む [単行本]
ひろ さちや (著)
釈尊 最後の旅と死―涅槃経を読みとく [単行本]
松原 泰道 (著)
中村元「ブッダ最後の旅」1
これは1973年2月18日NHK教育放送 宗教の時間の録音です。
当時、中村先生は東大教授で61才 奈良先生は駒沢大学助教授で44才です。
日本の誇る偉大な宗教学者中村先生の心のこもったお話です。
中村元「ブッダ最後の旅」2